ループ | ツルギジャケットの15年間 vol.2

ループ

THE LOOP

工場とフィールドをループするアイデア

工場から上がってきた「ツルギジャケット」のファーストサンプルは、その時点でおおよその原型はできているため、以降はフードのサイズ感やアームホールの大きさ、袖や丈の長さなどといったシェイプのディテールに、小さなマイナーチェンジを重ねていきました。 

こうして仕上がったプロトモデルは、複数のクライマーに手渡され、実際のアイスクライミングの現場で使い込まれます。バックパックを背負い、ときには深いラッセルにあえいで雪山をアプローチし、アイスフォールを登攀する。その一連の行動のなかで、不具合や改良点を洗い出す。それがフィールドテストの役割です。

「ツルギジャケット」では、開発の発端となったオーストラリア人とイギリス人、二人のクライマーが最初のフィールドテストを担当しました。山岳ガイドへのサポートを始めた頃でもあり、滑り手とは違う彼らのフィードバックを新鮮に受け止めたことを覚えています。 

現在では、多くのサポートガイドやクライマー、滑り手たちが国内外各地に点在し、それぞれ条件の異なる自然環境でフィールドテストを繰り返しています。その対象は、新製品だけに限らず、彼らが日常的に使用する定番と呼ばれるアイテムにまで及びます。

フィールドテストは「本番さながら」ではなく、本番そのもの。ほぼ完成に近いプロトモデルだから可能なテストで、発売前の最終確認としての意味を持つ。

当然ながら寄せられるフィードバックは多岐にわたり、ポケットの改良一つでも意見が分かれることは珍しくありません。だからこそ、レポートだけでなく、必要に応じて直接会い、なぜその改良が必要なのかをとことん話し合ってきました。

そうした丁寧なコミュニケーションを重ね、意見がある程度まとまった段階で、最終的にTETON BROS.のコンセプトに照らして判断します。

工場から送り出されたすべてのプロトモデルは、必ず実際のフィールドで使い込まれます。そこで得られたフィードバックは製品のアップデートに反映され、翌シーズンには最新の素材と仕様を取り入れた新たなプロトタイプが再びフィールドへと持ち込まれる。それを毎シーズン繰り返してきました。

アップデートの内容は、大がかりなモデルチェンジのこともあれば、カタログに記載されないごくわずかなシェイプの調整にとどまることもあります。けれども、この終わりなきループこそが「最適化」の核心であり、現場で製品を酷使し続けてくれる多くの仲間たちによって支えられています。

放射冷却によって氷点下20℃以下まで下がった山中を黙々と登る。これもある日のフィールドテスト。ドロップポイントに着く頃には夜が明けるだろう。

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