ツルギライトジャケットの誕生|vol.2 グリーンシーズンへの挑戦

春夏向けの製品づくりに踏み出した頃

バックカントリーを滑るスキーヤーやスノーボーダーのためのウェアづくりから始まったTETON BROS. は、サポートするガイドたちの要望を受け、次第に春夏向けの製品づくりにも踏み出していきました。

冬はバックカントリーガイドとして活動する彼らも、春から秋にかけては登山やクライミングのガイドへとアクティビティの軸を移します。その際、厳冬期を想定した「TBジャケット&パンツ」は適さず、グリーンシーズンに対応するウェアが求められていました。

緑豊かなフィールドをスピーディに駆け抜ける。山の楽しみ方はもっと自由でいい。

こうした現場の声を背景に、まずはソフトシェルとトレッキングパンツから開発が始まり、2013年頃には、春夏シーズン用防水透湿シェルからミッドレイヤー、ベースレイヤーまでを揃えたラインナップが展開されます。

もともとTETON BROS. は、スノーシーズンに特化することを前提に始まったブランドではありません。通年でフィールドに立つアウトドアブランドを目指す。それは創業当初からの一貫した思いでした。

とはいえ、産声を上げたばかりの小さなブランドにとって、資金力やマンパワーには限りがあります。できるところから着手するしかなかったことも事実です。

経営者二人がともにコアな滑り手だったこともあり、スキー・スノーボード製品の開発からスタートしたのは、きわめて理に適った判断でした。

ファッションアイテムはつくれない。けれど、自分たちが山で使う"道具"としてのウェアなら、いくらでもイメージできる。それこそが、今も変わらないTETON BROS.の製品開発の原点です。

最初の春夏向け製品はサーフトランクスだった

ちなみに、TETON BROS.が最初に手がけた春夏シーズン向け製品は、「ホワイトウォーターショーツ」という名のサーフトランクスでした。現在の「クライミングサーフショーツ」です。

これは、ブランド代表が熱心なサーファーだったことから、ソフトシェルパンツの余り生地を使い、自分用のサーフトランクスをつくったのがきっかけでした。

サーフィンやSUP、リバースポーツから、ボルダリングやクライミング、ハイキングまで幅広く使える「クライミングサーフショーツ」。TETON BROS.の春夏製品はここから始まった(写真は2026年春夏モデル)

当時のディーラー用資料には、「ソフトシェルの裏起毛や適度な生地の厚みが、水の冷たさから身を守ってくれます。ラフト、カヤック、SUPはもちろんサーフィンにも最適です」と記されています。

夏用ショーツに裏起毛生地を用いる発想は、一般的ではありません。しかしそれは、残反を再利用したからこそ生まれたものでした。

かつてリバーガイドとして働いていた経験を持つ代表は、そのコネクションを生かし、販売先として当時のラフティング会社などを想定。素材のミスマッチを、逆にメリットへと転換していきます。

この水陸両用ショーツは、やがて河原のボルダリングやディープウォーターソロクライミング、スクランブリングといったクライミングフィールドでも見出されていきました。彼らの声を取り入れながら、股関節の可動域を広げるなど改良を重ね、次第にクライミングショーツとしての特性も強めていくことになります。

コロラド州ボルダー発、マウンテンランニングとフリークライミングをミックスさせた「スクランブリング」を六甲山で楽しむ。写真提供:北野拓也

当初から「サーフトランクス」として販売することもできたはずです。しかし、海のプロダクトを手がけていない小さなアウトドアブランドにとっては、販売面での苦戦が予想されました。そこでリバースポーツやクライミングというアウトドアの文脈に位置づけることで、結果的にマルチユースな広がりを持つアイテムへと成長していったのです。

これは、アイスクライミング用ジャケットとして開発した「ツルギジャケット」が、スノースポーツや登山へと用途を広げていった過程ともよく似ています。

そして、この「ツルギ」は、さらなる軽量化という次の課題に向き合うことで、一步先のフィールドへ踏み出そうとしていました。

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