ツルギライトジャケットの誕生|vol.1 ツルギに秘められた可能性の扉

ツルギの機能を生かした春夏用シェルを作れないか

TETON BROS. が軽量シェル「ツルギライトジャケット」をリリースしたのは、2015年春。その2年前に誕生した秋冬向けの「ツルギジャケット」をベースに、春夏シーズンに向けて再構築したモデルです。

独創的なコンセプトと高い機能性で北米のアワードを受賞した「ツルギ」。その骨格を受け継ぎながら、より軽く、より汎用性の高い一着を目指しました。

外見はよく似ていても、実際に袖を通せば、その違いは明確です。単なる軽量化ではなく、数多くの選択の積み重ねによって生まれたプロダクトです。

高い機能性と個性的な表情を持つ「ツルギジャケット」から生まれた軽量春夏用「ツルギライトジャケット」。「ツルギ」というベースがありながらも、開発にはそれ以上の手間と時間を費やした。

きっかけとなったのは、アメリカ・ユタ州で開催されるアウトドアリテイラー(OR)ショー後、気の置けない日本人バイヤーたちが集った夕食会での会話です。

ORには毎年、日本からも多くの関係者が訪れ、最新のギアやウェアをチェックし、本場のアウトドアカルチャーとともに日本に紹介してきました。TETON BROS. も創業翌年から参加を続け、生地やパーツのサプライヤーとの重要なミーティングの場としてきました。

その夜、話題に上ったのが、TETON BROS. から前年秋に登場した「ツルギジャケット」でした。2013年にリリースされたこのジャケットは、首元から脇腹へ斜めに走るフロントファスナーを特徴とし、優れた換気性能としなやかな着心地を実現。アイスクライミング用として生まれながら、スノースポーツや登山へと用途を広げていきました。

着脱しにくいというプルオーバーの概念を一新させた「ツルギジャケット」。デビュー初年度から高い完成度を誇り、北米のアワードにも輝いた。

当時、TETON BROS. は創業して4〜5年という若いブランドで、フラッグシップの「TBジャケット&パンツ」とともに、ブランドとしての知名度も徐々に浸透しはじめていた頃でした。

しかし、毎年ORに足を運ぶアウトドア専門店のバイヤーたちにとっては、依然として「スキー・スノーボードウェアのブランド」という印象が強かったといいます。そんな彼らが認識を一変させたのが、「ツルギ」の登場でした。

なかでも、ウルトラライト(UL)ハイキングを日本に紹介してきた東京・三鷹の専門店「ハイカーズデポ」のオーナー、土屋智哉さんは、「3レイヤーで300g台なら十分に軽い」と評価し、リリース直後のファーストモデルをオーダー。自身もまた、アラスカ・ブルックスレンジでのパックラフトの旅で着用し、その実力を体感していました。

鮮やかな水色が特徴的な「ツルギジャケット」ファーストモデルを着用して、アラスカ・ブルックスレンジを旅する。撮影:村石太郎 提供:土屋智哉

一方、トレイルランニング用のシェルとしての可能性を感じたバイヤーも、複数いたといいます。

2010年代に入って一気に盛り上がりを見せたトレイルランニングシーンでは、多くのレースで、雨に対するプロテクションの装備を義務づけられるようになりました。まだ、山でのランニングに適したレインシェルが市場で限られた当時、軽量で、耐水性と通気性を両立し、なおかつ抜群の換気効果を備えた「ツルギ」は、トレイルランニングシーンで活躍する素地を備えている。そう感じた人が少なくなかったのです。

アイスクライミング用として開発されたジャケットが、トレイルランニングシーンでも注目を集めることになる。

この夜、席を共にした彼らに共通していたのが、「ツルギを、もっと軽量化できないか」という問いでした。それは、「ツルギジャケット」という製品に、さらなる可能性を感じたからこそ生まれた意見です。それぞれの立場やフィールドから発する、そうしたイメージや期待が噴き出したのが、あの日の夕食会だったというわけです。

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