Wind River Hoody 風を操るウェア、その誕生の物語
TETON BROS. · Column 2026
Wind River Hoody
風を操るウェア、その誕生の物語
「Wind River」——その名の通り「風の川」。ワイオミング州とモンタナ州をまたぐその山脈は、風の通り道と呼ばれる。ジャクソンホールでスキーインストラクターやホーストレッキングのガイドとして働いたNoriにとって、100マイル先に聳えるその山並みは忘れられない風景だ。Wind River Hoodyには、35年前の景色と風の記憶が宿っている。
ウィンドシェルという存在
行動中に肌寒く感じることは、季節を問わず訪れる。このひんやり感を凌ぐには、Bonding OctaやOcta Fleeceのようなミッドレイヤーで保温する方法もある。しかし発汗を伴う「行動」では、保温はさらに体温を上昇させてしまい、余計に汗をかくことになり汗冷えのリスクを高めることにつながる。
その時に重宝するのが、ウィンドシェルだ。その名の通り風「ウィンド」をブロックするシェルが冷たい空気から身を守る。通気する風(空気)をある程度カットするため暖かくも感じるが、同時に透湿性・通気性が汗をウェアの外に拡散させて蒸れにくくする。
ウェアの保温力の高さで体温を保つのではなく、行動中に自分自身の発熱によって体温を奪われないようにすることで寒さから身を守る。早朝から夕方までの行動はもちろん、ナイトハイクやナイトランでも重要で、バックカントリーでのハイクアップにも使用できるウィンドシェルの携行は、季節や場面を問わず常に必須なのだ。


季節やシーンを問わず、高い通気性で熱や汗を逃がし、常に快適
ある怪我から始まった誕生秘話
2015年の発売以来、TETON BROS.の定番の一つと言えるWind River Hoody。アップデートを繰り返しながら、登山やバックカントリー、クライミング中の休憩などあらゆる場面で使用できるように進化を続けている。
しかしその誕生は、思わぬところから始まる。2015年より少し前に、TETON BROS.代表のNoriはバックカントリー中に前十字靭帯を断裂。そのシーズンを強制終了することになり、術後のリハビリでロードバイクに乗り始めた。自宅のあったさいたま市内から森林公園までの100キロの道のりを漕ぎ続ける中で、ストレッチ性がありコンパクトに収納でき、さらに乾きの良いウィンドシェルの必要性を感じる。
国内トップレベルでサッカーをしていた学生時代から「ウィンドブレイカー」と呼ぶウェアをウォームアップの際に使ってきたが、当時のウェアでは通気性が乏しく激しい運動には向かなかった。それは肌に張り付き、速乾性やストレッチ性に満足がいかず、リハビリに使用できるウェアがなかったのだ。そこでNoriは、製品化の予定もないまま自分のためのウェアを作り始める。
ロードバイクで使用するためにフードもなく、背中側がお尻の方まで長いドロップテールで、リハビリのためのテクニカルウェアとして誕生する。生地探しから始まったこのプロジェクトで、複数の生地メーカーの膨大なサンプルの中から見つけたのが「Pertex Microlight」(現在の「Pertex Quantum Air」の原型となる生地)。従来のどの生地よりも通気性が高く、それでいて耐風性も備える。生地は凸凹しているので肌離れも良く、ストレッチ性も高い。これらの要素を高いレベルでバランスよく備えていたことで、理想とする機能を持つウェアへとなっていく。

初期モデルに刻まれた「PERTEX MICROLIGHT」のロゴ
製品化、そして進化
膝の回復とリハビリが進む中で、ショールームを訪れた人がこのサンプルを見つけ、「ドロップテールをやめてフードをつけて製品化してほしい」と熱望したことで、販売に向けたリデザインが始まった。袖口を乾きやすい仕様にし、パッカブルでコンパクトに収納でき、軽量化のためにトリム(引手などのパーツ)を最小限にして登山シーンで着用しやすくしたWind River Hoodyが完成する。
2016年頃の初期モデル ── フードを加え登山向けにリデザインされた最初期のWind River Hoody
2015年頃はトレイルランを各地で楽しむ人も増え、大会も全国各地で開催されていた。
Wind River Hoodyが登山、トレイルラン、バックカントリーと幅広く使える理由は、シンプルにデザインしたからだ。何かに特化したデザインではなく、無駄をなくしシンプルに、素材の特徴(通気・耐風・ストレッチ・張り付かなさ)を生かした結果、理想的なウィンドシェルとして誕生した。その後、さらに多様化していく用途に対応してサイズやフィットに調整を加えながら、「使う人の使い勝手の自由度の高さ」をもつニュートラルなプロダクトとしてアップデートを続けている。
2025年 — 素材の刷新
2025年春夏には生地をアップデート。Pertex Microlight(後のPertex Quantum Air)からリサイクルナイロンを使ったオリジナルファブリックへ。通気性と耐風性、速乾性や動きを妨げないストレッチ性はそのままに、引き裂き強度を高めてよりハードユースに対応したものになっている。TETON BROS.のみが使用するオリジナル生地として、Wind River Hoodyの進化は続く。
2015
Wind River Hoody 発売
Pertex Microlight採用
2015 – 2024
サイズ・フィット調整を重ね
登山・トレラン・BCに対応
2025
オリジナルファブリックに刷新
引き裂き強度アップ・リサイクルナイロン
用途が明確でコンセプトが確立しているプロダクトは、細かなアップデートによってフィールドでの使用や目的に合わせた最適化を続ける。コンセプトがブレることなく、より使いやすく、フィールドでの理想的なパフォーマンスを可能にしていく——Wind River Hoodyはその好例だ。
Wind River という名前

Teton Range · Wyoming — NoriがJackson Holeで過ごした時代

Wind River Range · Wyoming
ジャクソンホールでスキーインストラクターとして冬を過ごし、雪が解ければカウボーイやホーストレッキングのガイドとして働いたNori。その仕事中に遠くに見える山並みや雲、高台の木々の様子から、風の通り道が見えるほどだったという。100マイル先に聳え雪で覆われたその山並みは、35年を経た今もフラッシュバックする忘れられない光景だ。
Wyoming — Teton Range · Pinnacle Buttes · Wind River Range
その景色に思いを馳せてつけた名前が「Wind River」。風の川と呼ばれるその山脈の名は、このウェアが何のために生まれたかを静かに物語っている。風を操るためのウェアとして、Wind River HoodyはTETON BROS.の定番として今もラインナップし続けている。
