撥水ダウンとThermo Max

素材と性能

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スキー、スノーボード、アウトドアの雑誌で活躍するフリーライター&フォトグラファーでありながら、北海道でアウトドア用品店「Transit 東川」を営む林拓郎氏から、今期アップデートしたHybrid Down Hoodyについて性能をレポートしていただきました。


すべての素材には長所と短所がある。ダウンの長所については言うまでもない。軽量で保温性や収納性が高いことなどが挙げられるが、濡れに弱い点が短所だ。

それなら、とダウンの短所をカバーしたのが撥水ダウンだ。しかし簡単に考えてはいけない。撥水ダウンは羽毛を撥水剤の中に漬ける、といった単純な方法で実現できるものではない。詳細は加工メーカーの企業秘密になるので明らかにされていないが、細かな羽毛の一本一本にまんべんなく撥水コーティングを施すにはプラズマやレーザーを利用して、霧よりもさらに微細な粒子とした撥水剤を羽毛の表面にのせていく、という手法がとられる。

Teton Bros. でダウンを使うことを想定するのは、比較的運動量の少ない汗をかきにくいシーンだ(激しい運動をして汗をかくような状況ならOcta やVIVO をオススメする)。
こうした静的運動、あるいは汗の少ないシチュエーションでの保温着を想定しているにも関わらず、HYBRID DOWN では汗や濡れの対策をとったのだ。
それは、一見して汗をかいていない状況であっても、人間の身体は常に湿気を放出していることを知っているからだ。

また、撥水ダウンのコーティングは非常に安定した技術だが、もしも長年の使用によって加工に剥がれが生じてしまった場合にはダウンの短所が一気に表出してしまう。そのとき、保温性を確保できなくなっては意味がない。
このプロダクトは本当に厳しい環境の中、たとえて言うなら厳冬期のモンタナでのスノーモービルを使った移動、厳寒のコロラドのスキーリゾートでの滑走、2月の北海道のバックカントリーなどで必要な体温を保持するためにあるのだ。

だからTeton Bros. は撥水性だけに頼らなかった。1000 フィルパワーという十分なロフトを持ったダウンを使いながらも、化学繊維であるThermo Max を50:50 でブレンド。HYBRID DOWN HOODY の中綿は素材の状態で混ぜ合わせてから封入しているので、ダウンと化学繊維の配置にかたよりがない。たとえダウンが湿ったとしてもウエア全体では濡れに強い化学繊維も保温力を発揮してくれる。加えてサーモマックスが強い力で空間を支えることで、ダウンは潰れきることがなく、ギリギリまで保温力を発揮する事が可能になる。場合によってはその空間で乾いて、ロフトを回復することまで考えたのだ。

こうしてダウンとしての短所を意識しすぎることなく、ひたすらその長所だけに着目して使うことのできるタフな保温着が生み出された。素材の短所を知り、それを補う長所を持った素材を組み合わせる。個性にあわせて、その力を最大限に発揮できるポジションを担当するのはTeton Bros. が昔からとってきたやり方。HYBRID DOWN はチームワークの妙として生み出された、まさにTeton Bros. ならではのプロダクトなのだ。

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この記事を書いた人

林拓郎

林拓郎

スノーボード、スキー、アウトドアの雑誌を中心に活動するフリーライター&フォトグラファー。滑ることが好きすぎて、2014年には北海道に移住。旭岳の麓で爽やかな夏と深いパウダーの冬を堪能中。アウトドア用品店「Transit 東川」オーナー

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