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ラン専用と思っていたら見逃してしまう、極上軽快の万能パンツ[RUN PANT]

製品レビュー

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21SSから登場したこの超軽量パンツは「Run Pant(ランパンツ)」という名前を与えられているものの、決して走り専用に作られているわけではない。Teton Bros.としてはランニング用に作ってみたけれど、デビューから2年を経るうちにみんなが自由に使い倒していて、走る以外の守備範囲もどんどん広がってしまっている、というのが現状なのだ。

もちろんその基本コンセプトは走ることにある。ランを見据えたパンツとあって、最大の特徴はパンツスタイルを感じさせない足さばきの軽さだ。1平方メートルあたり約120gという薄い生地で構成された製品の重量は、Mサイズで実測177g。ストレッチのきいた生地特性とのマッチングによって、着用時のストレスは皆無。走ろうが歩こうが屈伸しようが、一切の抵抗感を感じさせない軽快さなのだ。

また、よくよく見ていただけると分かるが、このパンツは極端に縫い目が少ない。膝周りは立体的な構造になっているにも関わらず、膝関節を包むような縫い目が一切ないのだ。これが何を生むかといえば、足上げ時の生地と肌の摩擦を防ぎ、縫い目が減ることでパンツ全体の動きをなめらかにし、製品自体を軽く仕上げ、縫い目が色んなものに擦れて摩耗する、といったことを防いでいる。素材や丈だけでなく、縫製方法の面でもRun Pantは足さばきの軽さを追求している。こう見えて、隅っこまで徹底してコンセプトを詰めた。カリッカリに尖った製品なのだ。

ニセコでのトレッキングは小雨に見舞われた。上半身はTsurugi Light Jacketで固めたが、下半身はRun Pantのまま。コレくらい染みるが、濡れは全く気にならない。それよりも! この膝の曲がりに追従するストレッチ性と、膝周りに縫い目がないことに注目してほしい。このしなやかな履き心地は、これまでにない軽快さに繋がっている。

もちろんランを楽しむなら、世の中的にショーツが主流であることは間違いない。が、試しにRun Pantで走ってみて気づいたことがある。草や小枝を気にしないで済むのだ。もちろん足が覆われている安心感はトレッキングパンツで知っている。けれど、ランのスピードで草を気にかけず、ズバズバと進んでいけることの新鮮さ。そして朝一番の草原を抜けるときも朝露が足を濡らすことなく、ドライアクションのパンツの上を玉になって転がり落ちていく様子に、もしかしてランとパンツは相性良いのでは?と新たな感動に浸ることにもなった。

朝露のおりた山道を軽く走ってみた直後。草で足を傷つけることもなければ、虫刺されを気にすることもない。今までショーツを選んでいた理由が足運びなのだとしたら、Run Pantは十分にラン用パンツとして選択肢に入りうる。

とはいえ、Run Pantが真価を発揮するのはランではない。正直に言ってしまえば足を入れた瞬間から、これは全方位的にスキのない旅パンツだということは分かっていた。なにしろ履き心地がよく、歩く、走るというストライドをまったく阻害しないのだ。

だからこそ、初夏の島の旅にはRun Pantが最適だったのだ。バックパックを背負ったままフェリーに乗り、床の硬い二等船室でごろ寝を楽しむ。その際にも、腰骨に縫い目が当たると言ったことが一切ない。寝起きに開脚ストレッチをするのも簡単。そして島で自転車を漕ぎ、キャンプを楽しみ、小雨の中をハイキングし、浜辺で遊ぶ、そのすべてでRun Pantは一切、微塵も不便を感じさせない。

北海道の離島、天売島・焼尻島にバックパッキング。フェリーに乗って海を渡り、テントを張ってレンタサイクルを島の足にする。こうしたアウトドアな旅でも、パンツはRun Pantが1本あれば十分。

加えてドライアクションは水だけでなく汚れも寄せ付けない。たとえ地べたに直接座っても、泥汚れは払えば落ちる。どっこいしょとテントの中であぐらをかくときも、今ひとつ整備が追いついていないレンタルサイクルを漕ぐときも、足の動きや開きをじゃますることは微塵もなかったのだ。さらに9分の裾丈は、そのサイズ感が絶妙なのだ。足の長さに自信の持てない純日本人体型でも、キャンプサイトでのサンダルタイムなどに裾の引きずりをまったく気にせず、思う存分精神を開放しただらしない腰履きができるユルさも備えている。

このパンツを従来の製品と分かりやすく比較するなら、その対象はCrag Pantになるだろう。同じようにDry Action&ストレッチ性能を備えたタフなパンツは、あらゆる用途に耐えるウルトラマルチプレイヤー。夏と言わず冬と言わず、毎日履いて文句のない秀逸の万能感だ。

しかしRun Pantを知ってしまうと、その涼しさと軽快さからは離れられない。これまで何一つ不満のなかったクラッグパンツが少しだけ暑く感じられてしまうのだ。もう夏はRun Pantで決まり。機能的にはCrag Pantと同等の撥水性を備えながらも、ライトな快適さを備えており、夏のマルチパーパスなアウトドアパンツとしては申し分ない。

トレッキングパンツとしても申し分ない。左ポケットにはiPhone8が入っているが、生地がよく伸びるのでじゃまになる感じはまったくない。

最後にひとつ。この涼しく履き心地の良いRun Pantは、その軽量感を活かすためにフライが設けられていない。加えてウエストにはゴムが入っているものの、しっかり締めるにはヒモを縛る必要がある。そのため、用足しではいちいち結び目をほどくなど、何かと面倒になりがちだ。そこでオススメしたいのは手近なコードロックを増設すること。これだけで使い勝手は抜群に良くなる。

そこらに余っているコードロックをつけるだけで、使い勝手はぐっと良くなる。が、ランをメインにするならこうしたパーツは揺れによる不快感につながる。各自で使い方を工夫することこそ、ミニマルなプロダクトのおもしろさなのだ。

だからと言って、この手間をメーカーに求めてはいけない。Teton Bros.の製品は、それぞれの立ち位置を明確にしていることが魅力なのだ。何でもできることは目指していない。だからRun Pantにスマートフォンがきれいに収まるポケットはないし、ジッパー付きのヒップポケットもない。むしろこの限られた機能を使いこなして、どこまで自分の世界を広げることができるかで遊んでみる。それこそがこうしたコンセプチュアルなプロダクトとの向き合い方だ。

Run Pantは基礎になる部分がガッチリできあがっている。例えて言うなら、ダシはしっかりきかせときましたんで、このあとはどう料理してもらっても美味しいですよ、てなもんだ。そうしたTeton Bros.ならではの芯を食ったクォリティこそが、Run Pantをトレッキングパンツやスピードハイクパンツ、旅パンツといったさまざまなカテゴリーで活躍させる原動力となっているのだ。

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この記事を書いた人

林拓郎

林拓郎

スノーボード、スキー、アウトドアの雑誌を中心に活動するフリーライター&フォトグラファー。滑ることが好きすぎて、2014年には北海道に移住。旭岳の麓で爽やかな夏と深いパウダーの冬を堪能中。アウトドア用品店「Transit 東川」オーナー

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